先日、顧問会社から能力のある従業員のポストを引き上げるに当たって、執行役と執行役員とで法的な違いはあるのでしょうかとの質問を受けました。
用語としては非常に似ていますが、法的概念としては異なるものですので、今回は両者の違いを簡単に説明したいと思います。
1、法律上の規定の有無 執行役は、委員会設置会社において設置が義務付けられています(会社法402条1 項)。
しかし、執行役員は会社法上の規定はなく、重要な使用人にとどまると言われています。
2、業務執行に関する意思決定の有無 執行役は、会社法416条4項に基づく取締役会の決議により、委任された事項について 業務執行の決定を行い、業務を執行することになります(同法418条)。
しかし、執行役員は意思決定を直接行わず、取締役の意思決定のもとで業務執行することになります。
3、法的義務及び責任 執行役は、取締役の忠実義務、競業避止義務及び利益相反取引の制限等の規定が準用され(同法419条2項)、役員等の株式会社に対する損害賠償責任の主体(同法423条1項)となることが規定されていますが、執行役員にはこのような規定はありません。
上記以外にも違いはありますが、ニュアンスとしては、執行役はこれまでの取締役に近い存在であり、執行役員はこれまでの部長に近い存在と考えてよろしいかと思います。
また、執行役員は会社法に明記されている存在ではないため、各会社においてその地位や内容、権限等は様々と言えます。
もちろん一定の業務執行権限を委ねる可能性もある重要なポストですので、執行役員制度を導入される際には、細かなルールを含めた執行役員規程を制定されることをお勧め致します。
執行役と執行役員の異同