先日顧問先から、「従業員が10人を超えることになりましたので、就業規則を作成するに当たって注意事項等があれば教えて下さい。」という依頼を受けました。
この点、就業規則を作成及び変更する場合、以下の手続要件と実体要件に留意する必要があります。
まず、手続要件として、労働基準法第90条において「…労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」と規定されています。
そして、労働契約法第7条には「使用者が就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と規定されています。
このように就業規則の手続要件として、労働者等に対する意見聴取及び周知徹底が重要な要素となります。
なお、上記意見聴取に関しては、労働者等の同意が要求されているのではなく、意見を聴取すれば足りるとされている点に注意が必要です。
また、労働者へ就業規則を周知させる実際の方法としては、後日の立証の容易性等からして、労働者が目にすることの多い場所に(例えばタイムカードの近くなど)備え置く取り扱いをしている会社が多いようです。
次に、就業規則の変更等によって労働条件を変更する場合、労働者との合意があることが原則とされ(労働契約法第8・9条)、例外として同法10条にて下記要件が列挙されています。
①就業規則変更後の労働者への周知
②就業規則変更によって労働者が受ける不利益の程度
③労働条件変更の必要性
④就業規則変更後の内容の相当性
⑤労働組合等との交渉の状況
⑥その他就業規則変更に係る事情に照らした合理性
このように手続要件を満たした上で就業規則を作成・変更した場合であっても、実体要件として、その内容に関する上記要件等を総合考慮して合理性がないと判断されてしまう可能性もあります。
そのため、就業規則については、手続要件を遵守しつつも社会相当性のある内容にするという実体要件を満たす必要があることにも十分注意が必要です。