企業間の取引において、一時的であったとしても倉庫契約など「他社が自社の商品を占有している状態」に置かれることがあります。

そのような場合には留置権が多く問題になりますが、商事留置権や民事留置権など成立要件が異なる法的概念が錯綜していることに注意が必要です。

そのため企業が注意すべき点として、商事留置権と民事留置権の成立要件及び効果の違いを簡単に説明致します。

当事者の商人性がなければ商事留置権が発生しないことはもちろんですが、「物と債権との牽連性」を要求するか否か、占有物を誰が所有しているのかという点が両者の大きな違いと言えます。

商事留置権は、商人間の取引が継続的かつ反復的にされることから、取引の円滑と安全を確保すべく商人間の信用維持が重視されており、民事留置権が債権者と債務者間の公平の維持をその主眼に置いていることにその違いがあると言われています。

一般的な会社経営においては商事留置権の方が強力であり、民事留置権が問題になる場面が少ないと考えがちですが、商事留置権は債務者所有物に限られており、第三者の商品を債務者から預かっている場合などは民事留置権の発生の有無を検討する必要 があります。

以上を簡単にまとめますと、相手方に自社の商品等を占有されてしまう側の企業にとっては、契約締結時に留置権の条項等を削除することにより商事留置権の適用を未然に防ぐこと等を考える必要があるでしょう(商法521条但書)。

但し、商事留置権 が成立しなかったとしても、民事留置権が成立してしまう可能性があることにも十分 注意する必要があります。

他方、相手方の商品等を占有する側の企業にとっては、商事留置権の条項を明確に規定することはもちろん、仮に商事留置権が成立しなかった場合でも民事留置権が成立しないか等を十分に検討することをお勧め致します。

商事留置権及び民事留置権の異同
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