先日、顧問先会社より、「民事再生手続における別除権の実務的な取り扱いを教えて頂けませんか。」という依頼がありました。
そもそも民事再生手続開始時における抵当権・質権等は、別除権として担保権を実行できるため(民事再生法53条)、優先的に弁済を受けることができます。
他方、別除権の行使により、再生債務者にとって担保目的物が事業に必要不可欠な場合には、再生に大きな支障が生じてしまいます。
そこで、再生債務者が別除権者に別除権行使の猶予を求めたり、担保権を消滅させる方法として、(1)別除権協定、(2)担保消滅請求という方法があります。
(1)別除権協定とは、再生債務者が担保目的物を失うことによる不都合を説明して、目的物評価額を分割弁済することで別除権の行使を猶予してもらう方法です。
具体的な別除権協定の内容としては、別除権目的物の受戻し、すなわち再生債務者が別除権者に担保目的物の評価額を再生手続外で分割弁済することで抵当権の実行を防ぐという方法があります。
(2)担保権消滅請求とは、別除権にかかる目的財産物が再生債務者の事業の継続に欠くことができない場合に、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付し、裁判所の許可によって担保権を消滅させる制度です(同法148条)。
但し、当該財産の評価に相当する金銭を一括納付する必要があります。
一般的には民事再生手続中の会社に資力があることは多くないため、担保権消滅請求制度の利用は難しく、実務的には別除権協定を打診する方法が多いようです。
民事再生手続中の会社をスポンサーとして事業を譲り受けたり、債権者として別除権付の財産を民事再生会社に対して有している場合などには、申立代理人及び裁判所等と別除権の処理方法について、十分に検討する必要があるのではないかと存じます。