賃貸借契約における中途解約条項は極めて有用性があります。
この点、顧問先より、「中途解約条項が明記されていない以前に締結した契約書が出てきてしまった。
同契約書によれば、期間満了まで賃料支払義務が規定されている。どうにかならないか」との相談を受けました。
今でこそ中途解約条項は一般的な賃貸借契約書に明記されていることが多いのですが、昔の契約書においては上記のような不備や欠落もあり得る話です。
この点、法的に論理的な回答をするのであれば、契約期間が明記されており、中途解約条項も明記されていないのであれば、期間途中で一方的な解約はできないと言わざるを得ません。
しかし、仮に10年間契約期間が決められていたら、ずっとその契約に拘束されてしまうのかと言われると合理性に疑問が残ります。
そこで、参考になるのが、東京地裁平成8年8月22日判決です。
その要旨としては、「期間途中の賃借人の解約を禁止し、違約金を支払う旨の条項は有効である。
しかし、違約金が高額になれば、賃借人による解約が事実上不可能になり、経済的に弱い立場にあることが多い賃借人に著しい不利益を与えてしまう。
賃貸人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い結果になるから、諸般の事情を考慮した上で、公序良俗に反して無効と評価される部分もあるといえる。
約3年2か月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人である被告会社に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになる。
そのため、その効力を全面的に認めることはできず、1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効と解する。」とされています。
このように違約金条項は合意していても絶対ではなく、一部が無効となる余地があると考えておくべきです。
しかし、当該裁判例を参考にすれば、少なくとも1年間程度は公序良俗に反するとまでは言えないと判断される可能性があることも想定しておく必要もあります。
その上で、法的に論理的な結論を念頭に置いた上で、妥当性を持った柔軟な解決も図られる可能性があることも想定されることをお勧め致します。