先日、顧問先より一般企業における収賄罪についての質問がありました。
まず原則として、刑法をメインとする収賄罪の対象は、公務員及び公務員に準じるような 公共的な業務に就いている者が主体とされています。
一定の公の職務上の地位にある者が、その職務に関して財産上の一定の利益を受けてもよ いとなれば、職務の公正に対する信頼が損なわれてしまうからです。
この点、一般企業においては、公務員と異なり国民のために業務をしていないため、収賄 罪等には該当しないと考えられる方も多いのではないかと思います(贈賄側に該当する可能性があることは別です)。
しかし、会社法においても、取締役等が不正な請託を受けて財産上の利益を得た場合に は、収賄罪により処罰されるという規定があります(967条)。
確かに、国民のために業務はしていませんが、会社は株主の利益を最大限確保するために 業務をしているため、責任者的立場にある役員らが不正を働き、会社の財産を損なう危険もあることから、上記規定があります。
しかし、実務的には、不正の請託の立証が困難であったり、特別背任罪等の他の規定が利 用されたりして、本条文が適用される場面はそれほど多くないようです。
また、取締役が当事者の場合には、任務懈怠に基づく損害賠償責任を負う場合もあります し(423条)、社内における懲戒処分という手続もあろうかと存じます。
以上より、上記どの法律が適用されることになるかは別として、公務員でなくても、取締 役等の重要な地位に就いている会社関係者としては、いたずらに自らの利益のみを追求することのないよう十分に注意されることをお勧め 致します。
企業における収賄罪