東日本大震災以降、都心部を中心に自転車通勤する人が増えており、顧問先より、通勤途中に従業員が交通事故の加害者又は被害者となってしまった場合の会社としての対応及び責任について質問がありました。

法的問題点は多岐に渡りますが、任意保険加入という点に絞って、大きな概要とポイントを簡単に説明致します。

まず、従業員が通勤途中に交通事故の被害に遭った場合においては、仮に加害者が任意保険に入っていなかったとしても、原則として労災保険から相当の補償がされる可能性が高いと考えられます。

次に、従業員が加害者になってしまった場合には、交通事故の被害者から会社に対して使用者責任(民法715 条)を追及されるリスクがあります。

この点、あくまで業務執行についてなされた場合でなければ、使用者である会社に責任は生じないことが原則です。

具体的には、自転車を営業用車両として業務に使用している場合を除けば、業務執行性は原則として否定されるこ とになるでしょう。

但し、業務執行の範囲と言えるか否かについては、使用者の事業の執行から直接生じたものに限られず、行為の外 形からみて職務の範囲内の行為に属すると考えられるものまで含むとされています。

そして、自転車通勤も少しずつ浸透し、事故も多数報告されるようになってきており、今後会社として使用者責任を問われる可能性もゼロとは言えません。

そこで、少なくとも自転車通勤を許可する場合には、必ず任意保険に加入することを義務付けたり、安全運転に努めるよう指導・教育するなど、会社としても従業員個人としても現時点でできる限りの対応をされることをお勧め致します。

自転車事故と会社経営
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