今回は、「商品自体を理由とする慰謝料」についてです。
先日、メーカーである顧問先より、商品に問題があったとして、消費者から慰謝料を払ってほしいと言われました。
商品自体の損害賠償請求は別として、そのことによって被った精神的損害まで慰謝料として支払う必要があるのでしょうかという質問がありました。
例えば、交通事故に遭って、幸い怪我はなかったものの、車は壊れてしまったとします。
その際、車自体の修理費用とは別に、どれだけ愛着のあった車であったとしても、車が傷つけられたことを理由とする慰謝料は原則として認められていません。
なぜなら、車という物自体の機能と財産的価値が回復されれば、それ以上の損害はなく、原則として修理費相当額が損害の全てであると考えられて いるからです。
すなわち、物自体については(人に関する損害は別です)、損害は財産的損害にとどまり、精神的損害(慰謝料)は発生しないのが一般的な考え方と言えます。
その意味で、冒頭の顧問先の質問に回答するとすれば、原則として商品自体の損害賠償に応じれば足り、慰謝料まで支払う必要はないということになります。
しかし、裁判例等において、被害者が受けた心痛が通常より甚だしく、財産損害の賠償のみではその心痛を補填されない水準に達していると評価できる特別の事情が存在する場合には、例外的に物的損害のみであっても慰謝料が発生する場合もあるとされています。
そのため、一般論としての上記原則は理解した上で、ケースバイケースの状況に応じて対応する必要があることはご指摘させて頂きます。
商品自体を理由とする慰謝料