今回は、「投資信託満期償還金の相続分」についてです。
顧問先の取締役の方から、「故人の投資信託満期償還金について、遺産分割協議が終わる前に共同相続人の1人が法定相続分だけを引き出せますか。」というご相談を受けました。
投資信託の法定相続分の解約・払戻しができるかについて、これまで証券会社の取扱いや裁判所の判断も分かれていたのですが、平成26年2月25日及び同年12月12日の最高裁判所において、投資などの金融商品は、「相続開始と同時に当然には相続分に応じて分割されない。」という判断がされました。
「元本や分配金を受け取る権利は、投信の受益権に含まれており、その権利は相続開始と同時に当然に分割されるものではない。」とも指摘されています。
投資信託とは異なり、預貯金などの金銭債権は、相続開始と同時に当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属するとされています(最高裁平成16年4月20日)。
そのため、相続人から単独で自己の相続分について払戻請求ができるはずですが、実際の銀行実務では、裁判所の立場とは異なり、相続人全員の同意書や遺産分割協議書の提出がなければ、相続人1人からの払戻請求には応じていないのが実情のようです。
但し、正式な裁判手続を経れば、遺産分割協議中であったとしても、預金を取り戻すことができることは理解しておくことが重要です。
投資信託満期償還金の相続分