先日、渋谷ビルオーナーの会にて、「不動産賃貸借と民法改正」に関する講演をしました。
その中で、特に重要と思われる不動産賃貸借終了後の原状回復義務と通常損耗の関係についての注意点を説明します。
改正民法において、賃貸借契約終了後、賃借人は原状回復義務を負うものの、通常損耗部分については、原則として原状回復義務に含まれないと明記される予定です。
通常損耗とは、経年劣化と同じような意味で、貸室を通常の形態で使用していて、借主の過失なく損耗することや自然に劣化することを言います。
これまでの裁判例等においても、通常損耗部分についての補修特約の有効性は多く争われてきました(東京高裁平成12年12月27日・最高裁平成17年12月16日・大阪高裁平成18年5月2日等)。
裁判所においても、現時点では明確な結論は定まっていないようですが、住居とオフィスビル等の賃貸借契約の場合において、通常損耗「補修」特約の有効性に差があると考えられているようです。
オフィスビルの場合には、住居と異なり、借主が貸室をどのように利用するか千差万別であることから、通常損耗部分についても原状回復義務を借主にある程度負わせることも合理的ではないかというのがその主な理由です。
しかし、改正民法にて明記予定の通り、特約が存在しなければ通常損耗部分は原則として原状回復義務はないことから、貸主にとっては補修特約を明確に作成する必要性がより高まったと言えるでしょう。
例えば、どの時点の状況にまで回復すべきかを明記すべきでしょう。
このように原状回復義務と通常損耗については、住居かオフィスビルかという点や、特約内容の明確性等について、非常に難しい問題を包含していますので、十分に注意して対応されることをお勧め致します。