先日、顧問先より、「新しい投資家から出資を受ける際の注意点について教えて頂けますか。」という相談を受けました。
ある投資家からの出資を受ける際、一般的には投資契約書を作成します。
投資家と投資を受ける企業間においては、投資家が有利な立場にあることが多いため、投資家有利の内容となることが多いでしょう。
しかし、あまりに投資家に有利な契約書は、会社の自主性を損なう可能性があります。
そこで、以下、投資契約書を交わす際の注意点について説明します。
まず、投資契約書は、一般的に「事前協議条項」が含まれていることが多いです。
ある決定を会社がする前に、必ず事前に投資家と協議するという条項です。
そもそも、会社法は、会社の迅速かつ適切な意思決定を可能にするため、取締役(会)に自由な経営判断を委ねています。
したがって、このような事前協議条項は、会社の自由な経営判断を拘束する危険があります。
また、経営判断の都度、投資家との協議の場を設定しなければならず、取締役の迅速な意思決定を阻害する危険もあります。
投資家サイドの人物を、会社の取締役として派遣できる「取締役派遣条項」についても、上記と同様の問題が生じ得ますので、注意が必要です。
次に、投資契約書には「株式買取条項」が含まれていることがあります。
「以下に該当する場合、投資家は会社に対して株式を買い取ることを請求できる」というような条項です。
会社法上、自社株式の取得については、種々の手続的規制及び財源規制が定められています。
上記「株式買取条項」は、かかる会社法上の規制を潜脱し、会社資産の空洞化を招く危険性が高い条項ですので注意が必要です。
最後に、投資契約書には、「持株比率維持条項」がよく含まれています。
同条項は、新たに参入する投資家との関係で問題が生じ得ます。
持株比率の維持が義務化されていると、新規の投資家を迎え入れる際、旧投資家の持株比率を維持するため、新たに株式を旧投資家に割り当てる必要があります。
新たな投資家としては、同条項により、会社において十分な持株比率が与えられず、不満の残る投資となるおそれがあります。
投資契約書については上記のような問題点がありますので、同契約を締結される際は、契約上の法的リスクを十分に考慮した上での経営判断が必要であることに注意して頂ければと思います。