刑事事件において、被害者との示談が成立することは、被疑者・被告人の処遇に大きな違いをもたらすことになります。
「被害者と示談が成立して起訴猶予・執行猶予」等のニュースを目にすることもあるかもしれません。

そもそも、被害者と示談が成立するためには、被害者が示談に応じる意思があり、示談金を受領してくれることが必要です。
しかし、被害者の処罰感情が苛烈な場合、示談金の受領を拒絶することがよくあり、面談すら困難であるケースもあります。

そのような場合に有効な方法として、「損害賠償金相当額の弁済供託」という方法があります。
被疑者・被告人が、自らの行為を反省し、自らが相当と考える損害金を、金銭受領を拒絶する被害者に対し、被害者の住所地を管轄する法務局に供託するという方法です。

具体的には、供託書(法務局にて取得)に、
1、供託者(被疑者・被告人)の氏名住所
2、被供託者(被害者)の氏名住所
3、供託原因として「損害賠償発生の根拠」「供託者が相当と考える損害金」「現実の提供をしたが受領拒絶されたこと」
を記載する必要があります。

損害賠償金に付する遅延損害金も併せて供託します。
上記弁済供託の手続において、被害者の住所が不明では手続できないとも考えられますが、以下の方法も残されています。

まず、被害者住所を管轄する法務局を調べるため、被害者の居住する市区町村名を(具体的な地番までは不要)、検察官を通じて粘り強く聴き出す交渉をします。
被害者は、被疑者・被告人による接触をおそれて住所を開示しないことも多いですが、市区町村名までであれば開示に応じる被害者も存在します。

そして、市区町村までの住所が判明した場合は、供託書の被供託者住所欄に「〇〇市〇〇区以下不詳」等と記載します。
また、備考欄に「被供託者は、〇〇地方裁判所において係属中の事件番号〇〇の被害者である」等の被供託者特定事項を記入します。

上記を記載した供託書について、法務局に事前にFAXをすれば、供託書のチェックをしてくれる場合が多いので、実際に提出する前に法務局に確認することをお勧め致します。

以上を記載した被害金の弁済供託は、被疑者・被告人の反省態度を示すとともに、実質的な弁償とも評価されうるため、刑事事件においては有効な弁護活動の一つとなるでしょう。

刑事裁判における弁済供託
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