平成29年5月に民法改正法案が成立し、同6月に公布されました。
その後、各顧問先より、「民法改正で私たちの業種にはどのような影響はありますか。改正の骨子や概略等を教えて頂けませんか」という相談が増えてきています。
なお、改正民法は平成32年に施行予定です。
そこで、民法改正について、今後は特定のテーマをピックアップして、適宜解説していきます。
今回は、民法で新設された「定型約款」について説明します。
約款は、多数の顧客と画一的条件で取引する場合に有用として広く利用されています。
事業者にとっては管理コストを削減できる等のメリットがあります。
「約款」と聞くと、利用約款等、事業者と個人間の取引に適用されるイメージが強いですが、改正民法の定型約款の規定は、一事業者と不特定多数の事業者との取引も対象となる場合がある点に注意が必要です。
そこで、定型約款を利用する際に注意すべき点も幾つか説明します。
改正民法において、「定型的な取引を行うことについて同意をした当事者は(あらかじめ定型約款を契約内容とする旨を相手方に表示していたとき等)、定型約款の個別条項についても合意したものとみなす」という「みなし合意」の規定が新設されました。
上記規定により、定型約款を用いた取引は非常に簡便になったと言えます。
他方、定型約款を利用する相手方になった場合には注意が必要でしょう。
具体的には、定型約款を事前に示されれば、定型約款の個別条項も合意したとみなされてしまうため、契約にあたり、約款の各個別規定の丁寧な検討が必須と言えます。
なお、約款内に信義に反するような不当条項や不意打ちになり得る条項があった場合には、上記みなし合意が無効とされる一般的な救済条項はあります。
しかし、「信義に反する不当条項」に該当するかの判断は簡単ではなく、今後の判例の集積を待つ必要があるでしょう。
以上の通り、定型約款を用いる企業と取引をする際は、定型約款の事前開示請求を行うなどして、事前に十分な検討をすることが重要と言えるでしょう。