今回は、「賃貸借契約の更新と改正民法」です。
先日、顧問先より「賃貸借契約が改正民法施行後(2020年4月1日以降)に合意更新された場合には、現行民法と改正民法のどちらが適用されるのでしょうか。」との質問を受けました。
この点、契約が更新されただけで、法的性質が変わらないことからすれば、合意更新後も旧民法が適用されるという考え方が素直な法的解釈のように感じます。
しかし、結論として、改正民法施行後に合意更新(実質的に契約内容に変更がなかった場合も含みます)された場合には、改正民法が適用される可能性が高いと想定して、十分に備えておくことが必要でしょう。
上記結論に至る最大の理由は、改正民法に関わった方が著した「一問一答」という書籍に以下の記述があるからです。
「契約の更新の合意の時点で、更新後の契約について新法が適用されることへの期待があるといえるので、施行日前契約の締結時点において当事者が有していた旧法適用への期待を保護する必要性が失われている。
そこで、当事者の合意によって更新される場合には、更新後の契約には、新法が適用されることになると考えられる。」
上記書籍において、「本書は、編著者らが個人の立場で執筆したものであり、意見にわたる部分は編著者らの個人的見解にとどまるものである。」とはされています。
しかし、民法改正後に裁判例が集積されるまでに、本書籍が実務上の参考資料になるでしょう。
また法務省のURLも併せて考慮すれば、更新後の契約は改正民法が適用されるという法的解釈に基づいて対応した方がベターと考えられます。
なお、改正民法施行後に賃貸借契約を合意更新した場合において、連帯保証人の保証契約はどうなるかについても注意しておく必要があります。
同じく、上記書籍によれば、
「賃貸借契約が新法の施行日以後に合意更新されたとしても、・・・保証については、新法の施行日以後に新たに契約が締結されたものではないから、保証に関する旧法の規定が適用されることになる。
なお、新法の施行日以後に、賃貸借契約の合意更新と共に保証契約が新たに締結され、又は合意によって保証契約が更新された場合には、この保証については、保証に関する新法の規定が適用されることになることは言うまでもない。」
賃貸借契約と保証契約の法的考え方が必ずしも一致するものではないようで、法的論理が一貫していないように思えますが、上記と同じ理由で、1つの考え方として意識せざるを得ません。
そこで、以上をまとめますと、改正民法施行後に合意更新された場合には、改正民法が適用されるという考え方があり、実務上は同考えに備えた対策が必要と思われます。
但し、法的解釈においては合理的とは思われない側面もあり、将来的に異なる解釈もあり得ることから、2020年の改正前後のみならず、今後も数年に渡って注意して対応していく必要があるのではないかと考えます。