今回は、「取締役会の決議事項」についてです。
先日、顧問先より、「取締役会の決議事項と報告事項を区別する判断基準のようなものはあるのでしょうか。」という相談を受けました。
実務上、取締役会の会議の目的としては、決議事項と報告事項に大きく分けられます。
「重要な業務執行の決定」は取締役会の決議事項とされ、会社法362条4項各号において「重要な業務執行」が例示列挙されています。
同条や各会社の基準に沿って、取締役会の決議事項か否かを判断することが原則ですが、その判断が容易ではない場合には、できる限り決議事項として対応すべきでしょうか。
この点、決議事項として保守的に対応した方が後日の紛争リスクを低くできることは間違いありませんが、取締役会の機動的な運営を図るべき要請も否定できません。
しかも、「重要な業務執行の決定」に該当するか否かは、会社法に反しない限り、取締役会に判断権限があるはずです。
そうであれば、一旦報告事項として取締役会にて報告した上で、仮に取締役より「報告事項ではなく、決議事項にすべき」という意見があった時に初めて、改めて決議事項として取締役会で議論をする方法を取ってもよいと思われます。
少なくとも報告事項として各取締役に情報共有されている上に、決議事項として議論する場も与えられるわけですから、会社法の精神に反しないと思われるからです。
しかも、取締役会決議に参加した取締役が議事録に異議をとどめないときは、当該取締役はその決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。
同条からすれば、報告事項と思われる事項であったとしても、取締役会で議論をした後に、例えば決議事項として取締役会議事録に異議をとどめたいと取締役が要請できると思われるからです。
以上の方法を取ることによって、各取締役のそれぞれの考えを尊重した上で、重要な決議事項が法定されている会社法の趣旨を没却することなく、取締役会の機動的な運営も確保できるのではないかと考えます。