今回は、「労働契約申込みみなし制度」についてです。
先日、顧問先より、「業務委託や請負契約をする場合に、いわゆる偽装請負と指摘されてしまうリスクがあることは理解しています。
その上で、労働契約申込みみなし制度というものが適用されてしまうリスクがあると聞いたので、詳細を教えてもらえますか」との質問を受けました。
まず、「偽装請負」とは、形式的には業務委託契約や請負契約であったとしても、実態は、発注者が対象従業員に対して指揮命令をしており、実質的に「労働者派遣」に該当する場合をいいます。
労働者派遣の場合、労働者派遣法の適用を受ける必要がありますが、それを「業務委託」や「請負」という形式を利用して潜脱しているため、いわゆる「偽装請負」と呼ばれています。
次に、労働契約申込みみなし制度は、労働者派遣法の改正によって導入された制度です。
偽装請負が存在し、一定の要件が満たされた場合、発注者が対象従業員に対して労働契約の申し込みをしたものとみなされます(労働者派遣法40条の6第1項5号)。
そして、偽装請負が終了した日から1年を経過する日までに従業員が申し込みを承諾すれば、発注者・対象従業員間において、直接の労働契約が成立します(同条2項、3項)。
その際にポイントとなるのが、発注者において労働者派遣法等の適用を免れる目的があったかという主観的要件になります(同条第1項5号)。
大阪高判令和3年11月4日は、上記要件について、下記のように判断し、労働契約の成立を認めました。
「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、・・・偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当である」
かなり広範に偽装請負の意思を認めるような規範になっていますが、本件では約18年間の長期に渡って偽装請負状態が継続していた点を重視したものと考えられているようです。
上記のような「労働契約申込みみなし制度」の内容を十分に理解するためには、まずは「偽装請負」を正確に理解した上で、そもそも偽装請負と評価されかねないような対応をしないことが重要です。
業務委託契約や請負契約等をする際に少しでも参考になりましたら幸いです。