今回は、「身元保証契約と極度額」についてです。
先日、顧問先より、「従業員を雇用する際の身元保証契約ですが、改正民法によって保証限度額の定めが必要になったとのことですが、どの程度の金額が妥当でしょうか。」との質問を受けました。
身元保証契約は、従業員の親族等と会社との間における契約ですが、将来的に同社員が横領等の行為によって会社に損害を被らせた場合等に関する金銭的な保証を定めた契約をいいます。
民法改正によって、保証人が個人である身元保証契約については、極度額の定めがなければ効力を生じないものとされています(民法465条の2)。
極度額の定めについては、まず、金額等を明確に規定することが必要です。
曖昧な表現の場合、実質的に極度額の定めがないものとみなされるリスクがあるからです。
また、「極度額の定めについては、いくらぐらいが妥当なのでしょうか」とのご質問もよく受けます。
この点、金額が高すぎる場合には、実質的に極度額の定めがないものとみなされてしまうリスクがありそうです。
なお、神戸地裁昭和61年9月29日では、事例判断とはいえ、900万円を横領した従業員の身元保証人の責任として180万円とされていること等に鑑みると、高額な極度額の定めをしたとしても、法的に認められる範囲は狭いと考えておいた方が良さそうです。
身元保証契約について自動更新条項は、身元保証人の責任を限定的に関する身元保証法の趣旨により、裁判例では認められない傾向となっています(札幌高判昭和52年8月24日等)。
また、一度更新した場合において、改めて更新することは(2度目の更新)、身元保証法では予定していないと解釈されています。
以上の通りですが、身元保証契約に関しまして、少しでもご参考になりましたら幸いです。