先日、顧問先より、「別の会社から、事業を譲り受けたいのですが、どのような手続や書類が必要でしょうか。」というご相談を受けました。
事業譲渡の際は、事業を譲り渡す会社と譲り受ける会社の双方に、様々な手続が必要とされますので、同手続の概略及び注意点について、ポイントを絞って説明します。
まず、事業譲渡をする際、両社間で、事業譲渡の時期、方法、譲渡する事業の特定、今後の方針等を協議することになります。
その上で、事業を譲り受ける会社が、譲り渡し会社について、法的に問題がないか等を精査するデューデリジェンスという手続を行います。
デューデリジェンスの結果、事業譲渡について法的な障害がないこと等を確認できた場合には、事業を譲り渡す会社と譲り受ける会社の双方で、事業譲渡に関する株主総会決議や取締役会決議などの手続を行うことになります。
その際、事業譲渡に反対する株主に対しては、株式買取請求権が与えられることに注意が必要です。
次に、事業譲渡の際に必要とされる書類ですが、最も重要な書面は、事業譲渡契約書でしょう。
そして、事業譲渡契約書において、①譲渡対象財産、②事業譲渡対価、③譲渡により承継される労働契約の範囲、④承継資産及び負債の移転時期や引渡しの時期、⑤事業譲渡後の競業避止義務の範囲、⑥株主総会の期日、等の項目が重要になるでしょう。
最後に、③の労働契約については注意が必要です。
会社間の事業譲渡によって、労働契約も自動的に移転するわけではないからです。
労働契約については、承継される労働者の範囲を確定し、事業譲渡会社を一度退職した上、事業譲受会社と新たな労働契約を締結することが必要になります。
その際、事業譲渡の手続等について、労働者に十分説明するなどして、理解と同意を得る必要があることに注意して頂ければと思います。
上記以外にも様々な注意点がありますので、一つずつ手続に沿って進めていくことをお勧め致します。