今回は、「配置転換の限界」についてです。
先日、顧問先より、「ある社員について配置転換を考えているのですが、注意点等はありますか。」という質問を受けました。
配置転換とは、従業員の配置の変更であって、職務内容が相当長期間に渡って変更されるものをいいます。
新型コロナウイルスの影響が長期化する中で、配置転換等が必要な場合もありますが、下記の通り、配置転換には法的な限界がありますので注意が必要です。
実務的に問題となりやすい下記2つのケースについて骨子を説明させて頂きます。
まず、職種限定の合意があるケースです。
職種限定について労使間で明確に合意されている場合には、原則として配置転換は認められません。
明確な合意がない場合には、客観証拠により上記合意の有無が判断されますが、裁判所において職種限定合意の認定については、消極的な判断(認定しない方向)がされるケースが多いです。
最判平成10年9月10日は、放送局のアナウンサー募集において採用され、24年間アナウンサーとして勤務した社員についても職種限定(アナウンサーとして)の合意を認めませんでした。
もっとも、裁判所において全く職務限定の合意が認められていないわけでもない点には、念のため注意が必要です。
次に、配置転換に伴って賃金が減額されるケースです。
過去の裁判例を参考にしますと、裁判所としては、職種が変更されることと、賃金が減少されることは基本的には別の問題と考えられているようです。
そのため、十分な説明をせず配置転換のみを理由として一方的に賃金減額すること等は、原則として認められないと判断されているケースも多い点には注意が必要です。
以上の通り、配置転換の限界についてポイントを絞ってお伝えしましたが、具体的なケースによって有効性の判断が異なることは間違いありません。
ポイントとしては、配置転換に関する対象者への十分な説明や真摯な合意があるか否かが重要になりそうですが、会社経営において少しでも参考になりましたら幸いです。