今回は、「賃貸借契約と倒産解除特約」についてです。
先日、不動産オーナーである顧問先より、「賃借人が破産したようなので、特約に基づいて賃貸借契約を解除したいのですが問題はありますか。」との相談を受けました。

一般的な賃貸借契約書においては、「賃借人が破産手続を開始した場合には、賃貸人は賃貸借契約を解除できる」等の特約が付されていることが多いです(以下「倒産解除特約」といいます)。
しかし、倒産解除特約は、法的には「無効」と判断される可能性がある点に注意が必要です。

建物の賃貸借契約については借地借家法が適用され、同法30条等において「賃借人に不利な規定は無効とする」旨が規定されています。
過去の判例(最判昭和43年11月21日)においても、「建物の賃借人が差押を受け又は破産宣告の申立を受けたときは賃貸人は直ちに賃貸借契約を解除できる」旨の特約の効力について否定したものがあります。
賃借人において差押えを受けたり破産申立をしたからといって、直ちに賃料について債務不履行に陥るとは限らない点が理由付けの一つと思われます。

他方で、「手形の不渡処分を受け、支払を停止したとき」に無催告解除を認める旨の特約について、条件付きではあるものの有効と判断した裁判例もあります(大阪地裁平成3年1月29日)。
賃借人の状態について事実上の倒産状態にあり、営業活動はほとんど行われておらず、再建の見込みも認められないとの事実認定のもとに判断しています。

但し、上記大阪地裁の裁判例は、賃借人が法人であり、賃貸物件はその事務所として使用されており、賃借人の営業活動の廃止に伴い建物使用の必要性も消滅すると考えられた事案でした。
そのため、仮に賃借人が個人であり居住用物件の場合には、上記判断が異なる可能性もありますので注意が必要です。

上記の通り、倒産解除特約については、法的解釈が難しい点がありますので、実際に同特約を適用する際には、具体的事案に即して慎重に判断することが必要といえそうです。

賃貸借契約と倒産解除特約
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