先日、顧問先より遺言書に関するご相談を受けました。
遺言書は民法で厳格な方式が定められており、日付や署名押印がなければ無効となってしまうことが原則です。
そのため、遺言に関する相談を受けた場合には、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言の作成をお勧めしています。
公証人という専門家が関与するため、遺言が法律上の方式を満たさないリスクは限りなくゼロと言えるからです。
しかし、遺言の方式を満たさず、遺言としては無効とされてしまう場合であっても、裁判例上、死者の最終意思を尊重するための救済策も認められています。
具体的には、遺言としては無効であっても、「死因贈与」としては有効であるとして法的効力を認めるものです。
このような考え方は、講学上「無効行為の転換」と言われていますが、具体的な事情のもとで無効行為の転換が認められるか否かは様々な判断が要求されます。
その中でも、死因贈与を受ける相手方の承諾があったと評価できるか否かは特に重要と言えます。
死因贈与は、遺言のような単独行為とは異なる契約であるため、相手方の承諾がない限り、有効とは言えないはずであるからです。
現実には、適式な遺言を作成することなく、死亡されてしまう方もいらっしゃいます。
そのような方の意思を実現する一つの方法として、上記理論は有用ではないかと考えまして、今回はご紹介させて頂きました。
遺言と無効行為の転換