先日、顧問先より、「事業譲渡によって会社の一部を譲り受ける予定ですが、残業代債務等を引き継がないようにするにはどうすればよいでしょうか。」との質問を受けました。

事業譲渡の譲受会社としては、譲渡会社のもとで発生していた未払賃金等の簿外労働債務を引き継がないようにすることが実務的には重要です。
簿外債務には労働関連以外のものもありますが、ここでは労働債務に限定して説明します。

事業譲渡の場合、基本的に「労働契約上の地位の移転」となり、残業代等の簿外労働債務についても承継してしまうことになります。
そこで、過去の簿外労働債務を承継しないための1つの方法として、「退職+新規雇用」というスキーム等を利用することが考えられます。
この場合には、地位の承継ではなく新規雇用ですので(従業員の真摯な同意は必要にはなります)、原則として簿外労働債務は承継対象に含まれないことになります。

但し、過去と同様の労働慣行を継続することになれば、事業譲渡実行日以降に簿外労働債務が発生する可能性が高いです。
簿外労働債務が発生している原因が譲渡会社における労働時間管理や管理監督者の範囲設定の不備等にある場合には、当然ながら根本的にその点を法的に解決する必要がある点に注意が必要です。

事業譲渡と簿外労働債務
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