会社分割制度を利用した場合、従業員の地位の承継が法的に問題になることが多いです。
この点、「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」では、会社は会社分割について労働者の理解と協力を得るよう努めなければならないとしています(7条)。
また、民法635条においても、「使用者は労働者の承諾なしにその権利を第三者に譲り渡すことはできない」と規定されていますので、労働者の同意を得ることが必須となります。
具体的には、①労働者に対して、会社分割すること・労働契約が承継されることを通知し、②異議申立期間(13日間以上)を設ける必要がございます。
労働者からの同意を得て、初めて株主総会にて分割計画書の決議を行うことができます。
また、労働条件については、厚生労働省からの指針において有給休暇、退職金算定基準、勤続年数等の承継が定められています(平成12年労働省告示第127号)。
しかし、健康保険や厚生年金保険については、各保険機構がそれぞれ別の法律に基づき設立されている法人であるため、加入員である労働者の異動を簡単に行えません。
その際は、主務大臣の許可を得た上で、保険規約の改正等が必要となります。
このように会社分割を行う場合は、労使間の紛争を予防するためにも、資産や負債の分割だけでなく、労働契約の承継についても慎重に手続を進める必要があると存じます。
会社分割に伴う従業員の地位承継